掛け軸/掛軸/禅語「壺中日月長(こちゅう じつげつ ながし)」

『虚堂録』に「壽崇節上堂。至人垂化。示有形儀。開滿月之奇姿。蘊山天之瑞相。會麼卓主丈。只知池上蟠桃熟。不覺壺中日月長。」(寿崇節上堂。至人、化を垂れ、形儀ありと示す。満月の奇姿を開き、山天の瑞相を蘊む。会すや卓主丈。ただ池上に蟠桃の熟すを知り、壺中日月長きを覚えず。)とある。至人(じじん);道を修めて極に達した人。『莊子』逍遙遊の「至人無己」(至人は己なし)から。『後漢書』巻八十二下「方術列傳」費長房に「費長房者、汝南人也。曾為市掾。市中有老翁賣藥、懸一壺於肆頭、及市罷、輒跳入壺中。市人莫之見、唯長房於樓上見之、異焉、因往再拜奉酒脯。翁知長房之意其神也、謂之曰、子明日可更來。長房旦日復詣翁、翁乃與倶入壺中。唯見玉堂嚴麗、旨酒甘〓(食肴)盈衍其中、共飲畢而出。」(費長房は、汝南人なり。かつて市掾を為す。市中に売薬の老翁あり、肆頭に一壺を懸け、市を罷るに及び、すなわち壺中に跳び入る。市人これを見る莫かれど、ただ長房楼上に於いて之を見る、異ならんや、因りて往きて再拝して酒脯を奉ず。翁、長房の意その神なるを知り、之に謂いて曰く、子、明日更に来るべし。長房、旦日復た翁を詣る、翁すなわちともに壺中に入る。唯だ見る、玉堂厳麗にして、旨酒甘肴、その中に盈衍するを、共飲おわりて出ず。)に始まり、仙術などの指導を受けたりして、現実の世界に帰ってくると、本人は10日ばかりと思っていたのに、十数年も経っていたという仙話が出典。李白の詩「下途歸石門舊居」(下途、石門の旧居に帰る)に「餘嘗學道窮冥筌、夢中往往遊仙山。何當脱〓(尸徒)謝時去、壺中別有日月天。」(余嘗て道を学んで冥筌を窮め、夢中に往往仙山に遊ぶ。いつかまさに脱〓(尸徒)の時を謝し去るべき、壺中別に日月天あり。)とあり、「壺中」とは壺の中の別天地、仙境のことであり、悟りの妙境という。日月長は、悟りの世界には時間がなく悠々としているとのこと。

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「袖中(しゅうちゅう)に日月(じつげつ)を蔵(ぞう)す」や
「別に是(こ)れ一壺(いっこ)の天」と同義語

壺中とは別天地、仙境を意味し、転じて悟りの妙境。
そこはうららかで、時間の制約や束縛がありません。
時間を超越した悟境のたとえ。

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1つのことに集中して密度の濃い時間を過ごしていたら、

本人は大して時が経っていないと思っていたのに世間では随分と長い時が流れていた…

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 「壺中」というのは、壺の中の世界のことで、ごく限られた、小さな世界のことです。それはまた、別天地、仙境でもあります。
「日月長」とは、非常に穏やかな、のんびりとした時間がいつまでも流れているということで、この句は、壺のように小さな世界でも、平和に日が送れるという意味です。
 『後漢書』には、費長房(ひちょうぼう)という人が、壺公(ここう)と呼ばれた薬売りの老人の持つ壺の中に入り込んだ所、中には立派な宮殿があり、費長房はそこで、様々な歓待を受けて戻って来ました。わずか十日ほどだと思っていたのが、実は十数年経っていた、という物語が紹介されています。
それが「壺中日月長」なのですが、この「壺中」は必ずしも空間的な
意味ではなく、時空を超越した心の別天地をさすのです。

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